教訓 能ある鷹はネアカであれ(2008年3月)
学生ベンチャーの草分け的存在・堀場雅夫氏(堀場製作所最高顧問)とお会いしたのは去年のこと。だが半年経った今も「ネアカでなくてはいかん」という堀場氏の言葉が耳から離れない。
独創的なアイデアを持つ人はたくさんいる。しかしそれだけでは足りない。新技術を商品化し、世に問うて成功させるにはネアカである必要があるが、そういう人物があまりいない、と。堀場氏がまさにネアカだから説得力がある。言行一致である。
ネアカの経営者といえば先ず本田宗一郎氏が頭に浮かぶ。日本は資源のない国だから、ものづくりの原点に返らなくてはならない。「金が金を生む」という発想や、IT関連では日本経済は元気を取り戻さないのではないか(そういうビジネスはネアカでなくてもできそうだ)。だからこそ今は本田氏を勉強しなおすよい機会だ。
城山三郎他『本田宗一郎―その「人の心を買う術」』(プレジデント社)は、12人の著者による評伝的読み物である。本田氏に関する本は、自身の手になるものを含めてたくさん出ている。この本のよさは、どの人の視点から見ても本田氏がネアカだったということがわかること。
本田氏と二人三脚でホンダを引っ張った元最高顧問・藤沢武夫氏の言葉――。「うちの社長は太陽みたいな人なんだ。あの人と一緒にいると周りがパーッと明るくなってくる」
元ホンダ副社長・西田通弘氏の評は――。「本田さんという人はお互いの壁を一瞬で取っ払って、どんな人でもいっぺんにひきずりこんでしまう絶妙の才がありました」
本田氏自身の言葉で私の好きなもの――。「俺くらい幸せなのはいないとつくづく感じてますよ。口では辛かったと言うけれど、辛さを求めてやったわけではない
本田宗一郎語録に「能ある鷹はツメを磨け」というのがある。「失敗を恐れず、そして大いにツメを磨いて、その能力をどんどん表すことだ」という意味だ。
今回の教訓は、本田氏の盛大な精神に輪をかけてみた。